四代目又右衛門の頭の中を書いたブログ

MATAEMON'S THINKING BLOG

2020.12.19

又右衛門、新潟で砥がれる。四代目の再会。

17日は、特別に又右衛門鋏をつくっていただいている外山刃物 本社を訪れるために、久しぶりに新潟へと向かった。それも結構急なことである。

朝一番、暗い中を出発。電車を乗り継ぎ、伊丹空港へと向かう。空港で確認すると、新潟行が欠航になっておらず、とりあえずホッと胸を撫でおろした。ただ前日のニュースでも多く取り上げられていたように新潟方面の豪雪や悪天候のため引き返す条件付きであったため、少し不安な中での離陸となった。

機内ではパソコンで作業をしながら、ふと又右衛門鋏をつくってもらったときのことを思い出していた。
それは約10年前、他者と違うことにチャレンジすることを好む私は、オリジナルのハサミが欲しくなり、今まで何のつながりもなかった秀久氏のもとを訪れ、私の仕事に対する思い、ハサミに対する思い、四代目 秀久氏と、四代目 又右衛門で新しきを創りだすことにチャレンジしたいことを伝えたところ、秀久氏は、会ったばかりの私に次のような言葉をかけてくれた。

「武士にとって刀は命(魂)、花屋にはハサミが命(魂)、お前さんのハサミは、この俺がつくる」と・・・。
本当にその時は感動した。今まで大きな企業の申し出をも断るような職人気質の秀久氏が何の実績も付き合いもない突然現れた私にこのようなありがたい言葉をくれるとは思ってもおらず感動した。

さらに、その翌日、新幹線の駅に見送りに来てくれた時に、手にしているものを差し出し見せてくれた。

それは前日の夜、一緒に話した時に思い立ったハサミであった。正直ものすごく驚いた。昨日言ったものを翌日の朝、形にして持ってきてくれるとは思ってもいなかった。朝一番それもきっとかなり早い時間から作ってくれたのであろう。

そして別れ際に「おめーさん。ほんとにいろんなこと考えたり、変わったこと考えたり、面白い男やで・・・。これから面白くなってきたな~」と言葉を残して、その場を後にしていった。その時、花き業界で生きていくための刀を手に入れたような感じがしたことを憶えている。

飛行機は空港に近づくにつれて揺れが強くなってきたが、少し遅れて無事到着となった。

到着後はレンタカーにて外山刃物をめざした。道路はほとんど雪がなかったため、空港から約一時間で、外山刃物 本社に到着することができた。

車を停めて挨拶をし、ショールームでハサミを見せてもらっていると、ほどなく現社長である外山秀信氏が来られた。初めてお会いするのでご挨拶をしていると、しばらくして前社長の秀久氏が来られ、相変わらずの口調で私を出迎えてくださった。

そして社長ともに、又右衛門鋏がつくられた経緯や想いをお伝えしたところ、十分ご理解をいただき、今後も同様に又右衛門鋏をつくっていくことを快諾いただけ、更に製造から販売モデルまで新しくつくりかえ、今まで以上に取り組んでくださるとのお話をいただけた。

正直、社長が変わると、前社長の想いとか関係なく、自分のやりたい道を進めていく方々が多い中、先代の想い、客への配慮、そして将来のことを考えて取り組む姿勢は、とても嬉しいというか、また素敵な後継をつくられたように思う。

お昼をごちそうしていただき、再び事務所に戻って新しい又右衛門鋏の検討と販売方法の打ち合わせをじっくり行い、製造現場にてその工程を見学し、その後、製造責任者の方々と社長で再びミーティングを行ううちに、気がつけば外は真っ暗になっていた。

そして秀久氏が帰られる前に再び打ち合わせに来られ、「お前さんに初めて会ったときから思っていた。お前さんは他の人と違う目を持っている。何でもチャレンジしてくれ。売れる売れないのは二の次、何でも欲しいものをつくってやる。」「そして俺らのつくるハサミ(魂)を身につけて、世界中を周り、色んな世界をみせてやってくれ。」と言っていただけた。

正直、コロナ禍で海外事業やイベント事業などは厳しく、いろんな事業を見直したり、縮小したりを考えることもある中、このような言葉をかけてもらい、改めて前を向いて進んでいく力をもらえた気がした。

実際にいくつかの又右衛門新シリーズや海外モデルなども検討に入ることができ、来春が楽しみである。四代目同士のコラボさらに次世代の担い手と共に世界にむけて新たな旅もはじまるかと思うので楽しみである。

そして最後に一緒に写真を撮り、引き続きのパートナーシップと今まで以上の繋がりと再訪を約束して、後ろ髪を引かれる思いで、この地を後にした。

翌日早朝の飛行機も無事に出発。前日のことを思い出しながら、今回も10年前同様に、ハサミの取引を越え互いが話をできたことを嬉しく思う。そして何よりも今回の再訪で、砥がれたのは、私、又右衛門自身のように思える。海外も行けずに新しい日常に馴染みはじめ少し疲れ気味の又右衛門を今一度砥いで、さらに鍛造してもらえたように思う。

さ~~。切れ味と強さがさらに増したはずの又右衛門。この素晴らしい刃(はさみ)を手にして花き業界の鬼を斬り見晴らしの良い世界にしていきます。今後に期待あれ!!

■外山刃物(創業江戸文久年間)

https://www.toyamahamono.com